会社設立前に決めるべきこと、設立準備について徹底解説!

 

会社を設立する前に決めておくべきことはたくさんあります。

ここでは、株式会社を設立する際に、会社設立前に決めるべき重要な項目を10にまとめて解説していきます。

会社設立準備の最初のステップであり、一番キモになる部分ですので、ぜひ参考にしてください。
この記事の執筆者:宇坪隆夫

1.会社設立時の会社名(商号)を決める

会社名(商号)は、基本的には自由に決めることが出来ますが、いくつか注意しないといけないことがあります。

下記の3つにご注意ください。

 

会社の形態を会社名に表示させる必要があります。

会社の形態(種類)には、「株式会社」、「合同会社」、「合資会社」、「合名会社」の4つの会社の種類があります。

株式会社○○なのか、合同会社○○なのか、というように会社の種類が分かるように会社名には必ず会社の種類を表示する必要があります。

これらの会社の種類は、会社名の前に付けても、後に付けてもどちらでも構いません。

前でも後でも法的には決まりがないので、イメージが合うとか、呼びやすいとか、株式会社ということをアピールしたいとか、で会社名を決める人のセンスで好きに決めて下さい。

会社名を名乗るときは、株式会社○○とする方が、「株式会社」であるということが先に伝わり、社名を覚えてもらいやすいというメリットはあるかもしれません。

知名度がない創業期は、対外的には一つの信用力に繋がる「株式会社」で設立することをお勧めしたいです。

ちなみに「有限会社」という会社の種類も存在しますが、会社法ができる前に作られた古い形態の会社ですので、今の法律では新たに「有限会社」は設立することはできません。

商号は、使える文字が決まっています。

日本語のひらがな、カタカナ、漢字の他に下記の文字も使うことができます。

・ローマ字

*大文字も小文字もどちらも使うことが出来ます。日本語とローマ字を組み合わせることも出来ます)

・アラビヤ数字

*数字だけの会社名を付けることも出来ます。)

・「&(アンド)」「‘(アポストロフィー)」「,(カンマ)」「−(ハイフン)」「.(ピリオド)」「・」などの符号

*文字を区切るための符号として使うことが出来ますが、会社名の最初と最後に使うことはできません。

 

響きの良さやカッコ良さからか、最近では、ローマ字で英語表記する会社が増えてきました。

大手企業で有名なのは、「株式会社N T Tドコモ」とかでしょうか。英語と日本語の組み合わせでも違和感なく浸透しています。

 

同じ住所地に同じ会社名の会社が既にあると会社設立の登記ができない。

会社の本店所在地をどこにするかも決める必要がありますが、その本店所在地に、同じ会社名が既に存在している場合は、会社設立の登記ができないため、会社名を変えるか、本店所在地を変えるしかありません。

会社名が決まったら、事前に法務局などで本店所在地を予定している場所に同じ会社名がないか調べておきましょう。

ちなみに、過去に、恵比寿で会社を設立するので、会社名を「株式会社恵比寿」にしてはどうか、という話しになったケースがあり、本店所在地を予定していた場所に、「恵比寿」という会社名が他にないか調べたことがありますが、その所在地には「恵比寿」という会社名はなかったのですが、「恵比寿」という社名の会社が、東京だけでも100社を超えているということが分かり、あまりにも多すぎるので、やっぱり会社名は変えようという話しになったことがあります。

 

会社を設立すると、会社名の由来を聞かれることはよくあります。

どこかで聞いたことのあるような会社名よりも、会社のビジョンやミッションを反映しているような、起業の思いなどが伝わるような会社名にした方が、会社名の由来を説明する時に、共感を得られたり、ビジネスに繋がる話しが出来て、ブランディングや営業的にもメリットがあると思います。

経営的な視点を持って、会社名を考えてみましょう。

 

2.会社設立時の本店所在地を決める

会社の住所のことを「本店所在地」という呼び方をします。

これから会社を設立するので、会社はまだ存在しません。そのため、法人名義では事務所を借りることが出来ません。

それでは、会社設立をする時の本店所在地、住所はどこにしたらいいのでしょうか?

ここでは、本店所在地を決める時に、本店所在地として考えられる場所や注意点などを解説していきます。

会社設立時に自宅を本店所在地にする

自宅を本店所在地にする場合は、持ち家の場合と賃貸の場合とがあります。

持ち家の場合は、誰の許可も必要としないので、すぐに住所を用意することができます。

コストもかからず、契約書も交わす必要がないため、一番手っ取り早い決め方かもしれません。

デメリットとしては、業種にもよりますが、自宅でビジネスをやる=副業のように捉える人などもいて、本気度も含め、信用度が低くなる傾向にはあります。

実態がない会社のような印象を与えてしまう場合もあります。

 

賃貸の場合も同様ですが、問題なのが賃貸借契約上は、「居住用」として契約しているという事実です。

会社の本店所在地とするということは、事務所として利用するということになります。許可もなく事務所として使用していると契約違反になります。

大家さんに許可をもらえばいいのではないかと考えるのですが、多くの場合、許可を得ることが出来ません。

大家さん側の税金の問題や居住者以外の人の出入りなどを嫌がるということが理由にあげられます。

賃貸の場合は、トラブルを避けるためにも、事前に大家さんに相談するなどの検討が必要です。

 

会社設立時に新たに賃貸事務所を契約して本店所在地にする

賃貸の事務所を新たに契約して本店所在地にする。

会社設立当初から人は雇う予定がある場合には、必然的に事務所が必要になりますので、賃貸事務所の契約は必須と言えます。

しかし、これから会社設立する予定ですので、まだ会社はありません。

当然、法人名義の契約が出来きないということになるのですが、この場合は、どうしたらよいのでしょうか?

会社設立時の本店所在地にしたいという場合は、個人名義の契約にするしかありません。

本店所在地にしたい場合で、すぐにでも事務所を使いたいというような時は、事前に法人の設立予定ということを大家さんに伝えた上で、個人契約をしておいて、法人設立が終わったら、名義変更をしてもらうことになります。

名義変更は、覚書などでも構いませんし、可能であれば、個人契約の時に法人設立予定である旨の一筆を入れてもらえれば、手間が省けますので、相談してみるといいと思います。

あとは、新たに事務所を契約する時は、敷金や礼金などの費用は当然ですが、契約後も机や椅子などを揃えて行く必要があるので、ある程度まとまった資金を準備しておく必要があります。

会社設立時から賃貸事務所でビジネスをスタートするという人は、資本金とは別に余裕資金を手元に持っていることが前提になると考えておいていいでしょう。

会社設立時にレンタルオフィスを契約して本店所在地にする

レンタルオフィスは、必要なスペースを貸し出してもらえ、共用ですが会議室や秘書サービスなども利用できるので、初期費用を抑えたい時など、一人や小規模でスタートする場合には、とても使い勝手の良いサービスです。

自宅を本店所在地にしたくないという場合や事務所で使いたくないという場合には、まずは、このレンタルオフィスを検討することになるでしょう。

注意したいのは、レンタルオフィスは、法人の本店所在地として登記できないケースがあるということと、レンタルオフィスを本店所在地にしている会社だと、信用力の問題もあり、銀行の法人名義の口座を作らせてもらえないというケースも出てきている点です。

本店所在地として登記していいかどうかは、事前に確認するだけですので問題ありませんが、銀行の法人口座は、申し込みをして審査を受けないと分かりません。

法人名義の口座を作らせてもらえなかったケースでは、資本金が少なく、事業の実態が見えづらいなど、何らかの問題が絡んでいることが多いので、極端に資本金が少ない会社や今までにない全く新しいビジネスをこれから始めるという会社などは注意が必要です。

またネット銀行は、比較的、法人名義の口座は作りやすいと言われていますので、併せて検討してみてください。

会社設立時にバーチャルオフィスを契約して本店所在地にする

バーチャルオフィスで住所を借りて本店所在地にするということも考えたれます。

バーチャル=仮想ということですので、事務所としてのスペースは存在せず、住所と電話番号などを借りられる契約が多いです。

自宅を本店所在地にしたくないという場合で、費用もかけたくないという場合などは、レンタルオフィスよりも安いので、バーチャルオフィスを検討することになりますが、バーチャルオフィスは、特に会社設立時の本店所在地としては、お勧めはしていません。

やはり、銀行の法人名義の口座を作らせてもらえないという問題があり、特にバーチャルオフィスの場合は、ほぼ確実に本店所在地と業務を行う場所が違うということが分かるため、バーチャルオフィスでは、口座の開設を禁止している銀行もあります。

どうしてもバーチャルオフィスを利用したい場合は、会社設立時は、いったん自宅などを本店所在地にしておき、銀行の法人名義の口座の開設が終わった後に、本店所在地の変更をするなどの対策が必要です。

本店所在地は、銀行の融資や許認可、助成金や補助金などの申請にも影響してきます。

万が一、問題が発生した場合は、本店移転という本店所在地の変更をして乗り切りましょう。

 

3.会社設立時の事業目的を決める

会社設立をする際には、事業の目的を決める必要があります。

事業の目的は、その会社がどんな事業をしているのかを明示するためのものですが、この事業の目的として記載したものが、会社の売上に計上されるものと理解しておくと良いでしょう。

事業の目的に記載していないものを事業として行っている場合は、銀行などから指摘を受けて、事業の目的の変更を求められることもありますので、これから行う事業については事業目的としてしっかりと記載しておく必要があります。

どんな事業目的を書いたら分からないという場合には、今まで自分が勤務していた会社の事業目的やこれから行う事業に近い事業を行っている会社の事業目的を調べてみて、参考にするのが良いと思います。

会社のホームページに載せているケースもありますし、法務局で調べることもできますので、下記のポイントに注意しながら検討してみましょう。

 

どんな事業を行っている会社なのかが分かる内容にする

具体的に書かないといけないという決まりはありませんが、自分の会社がどんな事業を行う会社かを明示するものになり、会社の自己紹介とも言える部分になりますので、具体的に他人が見ても分かるような内容にする必要があります。

 

これから行う事業とこれから行う可能性がある事業を入れる

これから事業を行う内容のものは当然ですが、会社の設立の時点で、まだ準備中であったり、企画の段階のものでも、将来行う可能性がある事業も入れておきましょう。

事業の目的は、会社を設立した後でも、変更や追加をすることはできますが、法務局での手続きが必要ですので費用がかかります。

余計な手間や費用を掛けないためにも可能性のある事業はあらかじめ入れておくことをお勧めします。

ただし、あまり何でもかんでも入れてしまうと、何の商売をしている会社か分からない会社に見えますし、最近では、法人口座を作らせてもらえなかったケースもあります。銀行の融資を受ける際にもマイナスになるケースがありますので、本業と全く違う事業内容のものは、入れるべきではないです。

 

許認可が必要な業種は、その許認可に必要な事業目的を入れる

国などの許可や認可がないと、その事業を行うことが違法となる業種もあります。

そのような事業を行う場合には、事業目的に記載しなければいけない内容が具体的に決まっていますので、事前に確認をしておく必要があります。

食品の製造販売や飲食店の経営、不動産の宅地建物取引業、人材派遣業、中古品の売買や運送業、生命保険や損害保険の代理業など許認可が必要な事業は多くありますので、注意が必要です。

 

4.会社設立時の資本金の金額を決める

会社設立をする時の資本金は、いくらにするべきなのでしょうか?

資本金については、1円以上あれば会社を設立することができます。では、手元に10万円しかないから、10万円を資本金にすると決めてしまってもいいのでしょうか?

資本金は、様々な場面でビジネスに影響を及ぼすため、安易に決めて後になって後悔しないように、会社の設立の前にできる限りの準備をした上で、資本金は決める必要があります。

資本金については、いろいろな基準が存在していますが、対外的な信用力や事業を行うための元手という視点からも、一般的な平均額と言われている資本金300万円くらいから少なくともスタートするべきでしょう。

また、人材紹介事業や人材派遣事業などの事業を始める場合には、厚生労働省の許可が必要になるなど、許認可が必要な業種もあります。

資本金は1,000万円未満であれば、税制上のメリットなどもありますので、会社設立時は、300万円から1,000万円未満というのが理想かも知れません。

資本金が1,000万円未満の場合には、消費税の免税制度を利用できますが、2023年10月からインボイス制度が始まりますので、注意が必要です。

資本金については、「会社設立時には、資本金はいくらにすればいいのか?決め方」

で詳しく解説しています。資本金の額によって、税制も含め、さまざまな影響を受けるため、しっかりと理解した上で資本金は決めていきましょう。

5.会社設立時の発起人(出資者、株主)を決める

発起人とは、会社を設立しようと思い立って事を始める人のことをいいます。

会社を設立する手続きを行う人ということになりますが、資本金の出資をしたり、定款を作成したりと会社設立の様々な役割を負います。

この発起人は、出資者であり、株主ということにもなり、会社設立後は、会社の株主として経営の意思決定をして行くことになります。

また、発起人は、取締役とは役割が違いますので、ご注意ください。

発起人は、1人以上であれば、人数の上限はありません。法人や外国籍の人も発起人になることができます。

ただし、15歳未満の未成年者については、会社設立時に必要な印鑑証明書を用意できないということもあり発起人として認められていません。

1人で会社を立ち上げるときは、発起人は1人ということになりますが、当然、株主になって取締役にもなることになりますので、1人で全部を決めて進めて行くことができるので、手続きが簡単です。

注意が必要なのは、発起人が2名以上の場合です。

2名以上になると、準備する書類も増えて、手間が増え、時間がかかる傾向にあります。

また、会社の重要事項を決める際に意見が割れると揉める原因にもなります。発起人は、株主であり出資者ということになりますので、最初の出資割合をどうするかをよく考えておく必要があります。

経営者は、最低51%の株式を持つべきです。

この出資割合で、会社の経営権を誰が持つかということが決まりますので、発起人を決める際には、出資割合にも注意しましょう。

出資割合については、「会社設立の株式は何株用意すればいい?資本金の出資割合は?」で経営権などのことを詳しく解説しています。

6. 会社設立時の1株をいくらにするか決める

資本金や出資割合を決めるときに、1株あたりの金額をいくらにするかも決める必要があります。

額面株式という言葉を聞いたことがある人も多いと思いますが、昔は、株券に金額の記載があるものを額面株式と言い、額面金額は会社が最初に株券を発行した時の金額のことを言いました。

そして、この額面株式は、1株の金額は5万円と決まっていました。

しかし、今の会社法という法律では、額面株式が廃止されていますので、1株は1円以上であれば、自由に決めることができるようになっています。

1株5万円という会社は、未だに多くありますが、これは昔の法律の名残りと、会社設立時にいくらにすべきかという明確な答えがないため、無難に昔の額面金額にならって5万円にしたという会社があることが要因です。

例えば、資本金300万円で1株5万円だと決めた場合は、会社が発行する株式の総数は、300万円÷5万円で、60株ということになりますが、この株式の総数が少ないと、将来、株の増資や譲渡をしたいときに、出資割合の問題もあり株の異動をしづらくなるという問題がありますので、1株あたりの金額は、高過ぎず、低過ぎない金額にするべきです。

高過ぎず、低過ぎず、株の異動のしやすさという意味では、持株数をわかりやすくするという効果もある1万円という金額が一番おすすめです。

7.会社設立時の役員を決める

会社設立時には、役員を決める必要があります。一般的には、代表取締役、取締役、監査役を決めていきます。

株式の譲渡を自由にできる上場会社の場合は、取締役3名以上、監査役1名以上が必要で、取締役会という機関を設置する必要があります。

取締役会は取締役が3名以上いないと会社に設置できません。

会社設立時から上場を目指すという場合であれば、取締役3名以上、監査役1名で取締役会のある会社にして準備を進めた方が良いとは思いますが、そうではない場合は、監査役を置かずに、取締役だけでスタートすることになります。

また、株式の譲渡に制限がある一般的な会社(上場会社以外)や取締役会を置かない会社などは、監査役を置かなくても良いことになっています。

取締役は、1名以上いれば良いので、1人で会社を設立する場合は、取締役1人のみの会社ということになります。

代表取締役は、取締役の中から選ぶことになっていますので、1人の場合は、取締役が代表取締役になります。

取締役が2名以上いる場合は、取締役の中から代表取締役を決めることになります。

8.会社設立時に役員の任期を決める

役員の任期も決める必要があります。この任期は、通常は取締役は2年、監査役は4年ですが、それぞれの任期は、最長10年、最短だと1年とすることが可能です。

つまり、役員の任期は、1年〜10年の間で選べるということになります。

役員の任期が終わると、同じ人が役員を継続する場合であっても、法務局へ重任の登記の手続きをする必要があります。

重任の登記をするためには、登録免許税や専門家に対する手数料などがかかるため、取締役1名の場合や、不動産管理会社などの家族での経営が前提の会社であれば、役員の任期は最長の10年にすると手間とコストが省けるのでいいと思います。

また、取締役の人数が多い時などは、任期を長くすると、途中で役員を辞めたいだとか、辞めさせたいという事態になった時に、辞任や解任という手続きが必要になり、手間やコストもかかり、何より会社の謄本にも辞任や解任という履歴が表示されてしまうので、対外的な心象が悪くなってしまうケースもあります。

任期が1年だと、手間やコストもかかり現実的ではないので、2年から5年くらいにするケースが多いでしょうか。

問題ないのであれば、手間やコストを考えると取締役や監査役の任期は10年にしておきたいところです。

9.会社設立日を決める

会社の設立日は、特に制限はないため、自由に決めることができます。

「特にこだわらないから、いつでもいい」という方もいらっしゃいますが、多くの人が「大安」や「記念日等」を選んでいるというお話しを伝えると、やっぱり「大安」や「記念日等」にしたいと気持ちの変化が起こるケースは多いです。

普段こだわらない人でも、予定している設立日が「仏滅」だと分かると縁起が悪いと感じてしまうようです。

会社設立日は、法務局に、会社の設立書類を提出した日となるため、土日祝日は会社設立日とすることができません。

正月休みの12月29日から1月3日も会社設立日とすることができないので注意が必要です。

あと、設立日を1日ずらすと、僅かですが、節税ができます。

キリがいいので月初の1日を会社設立日にするケースは多いのですが、1日ではなく、2日以降にすると、法人の住民税にあたる均等割額という税金が、1ヶ月分の5,900円安くなります。資本金が1,000万円以下であれば均等割額は1年間で7万円です。

また、決算月を3月や12月にする必要のあるケースでは、会社設立日がいつかによって、会社の第1期目の事業年度が決まりますので、この場合は、決算期を変えるか、会社設立日を変える必要が出来きます。

会社設立日と決算月は、消費税の免税制度にも影響してくるところなので、インボイス制度のことも理解した上で、決めていきたいですね。k

10.会社設立時に決算月(事業年度)を決める

決算月をいつにするかも決める必要があります。

決算とは、会社にいくら利益が出て、資産の状況がどうなっているのかを計算することを言いますが、この計算期間のことを事業年度といい、決算月が3月の会社であれば、4月1日から3月31日が事業年度になります。

日本では、上場会社、特に社歴が古い会社に3月決算という会社が多いため、決算は3月というイメージを持っている人が多いと思いますが、会社の決算月についての制限は特にないため、何月を決算としても問題ありません。

また、国や地方公共団体などの会計年度が、4月から3月ということもあり、これに合わせて3月決算としている会社も多くあります。

しかし、どうしても3月決算にする必要があるなど理由がある場合を除き、会社の実情や関係者の状況などを鑑みて無視のないように決めて行くことが大切です。

最も適した月を決算月にできるように下記のポイントを見ながら考えてみましょう。

 

ポイント①消費税の免税制度を利用する

消費税には免税制度というものがあり、会社設立時の資本金が1,000万円未満であれば、原則として、会社設立の1期目と2期目の2期間は、消費税は免税されます。

しかし、特定期間といって事業年度の開始から6ヶ月間の売上が1,000万円を超え、かつ6ヶ月間に支払った給与等の金額が1,000万円を超える場合には、翌事業年度の消費税は免除されないという、複雑な制度になっているため、会社設立して、うまくいけば、2期間は、消費税が免税になりますが、初年度の売上や給与の金額が大きい場合は、1期目は免税で、2期目は消費税は免税にはならないということになってしまいます。

そして、さらに特例で、事業年度が7ヶ月以下の場合には、その7ヶ月以下の事業年度については、特定期間とは判断されないため、売上や給与等が1,000万円を超えていたとしても、翌事業年度も消費税は免税されるということになりますので、これらの取り扱いも理解しておく必要があります。

従って、この免税制度をうまく使うためには、会社設立日から決算月までの期間が重要になります。

会社設立月から6ヶ月間の売上と給与等が1,000万円以下であることが確実な場合は、2期目の消費税は免税になるため、設立1期目の事業年度を最長の12ヶ月にすることができれば、1期目と2期目の2年間の消費税が全額免税ということになります。

この場合、例えば4月1日を会社設立日にした場合は、12ヶ月後の3月を決算月にすれば、最長ということになります。

また、会社設立月から6ヶ月間の売上と給与等が1,000万円を超えることが確実な場合は、1期目の事業年度を7ヶ月以下にすれば、2期目の消費税も免税にすることができますので、1期目と2期目合わせて最大19ヶ月間の消費税を免税にすることが可能になります。

この場合は、例えば4月1日を会社設立日にした場合は、7ヶ月後の10月を決算月にするということになります。

 

2023年10月からインボイス制度が始まりますが、このインボイス制度が始めると、実質的には、この免税制度を使うケースは無くなっていくと考えられるので、期間限定の制度ということになります。

国税庁「基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」

国税庁「インボイス制度の概要」

 

ポイント②自社の繁忙期を考えて決算月を決める

業種によって繁忙期は違いますが、1年で一番忙しい時期を決算月にしてしまうと、通常業務だけでも忙しい時期に、決算業務が加わりますので、余裕がない中で決算を進めていくことになります。

例えば、アパレルのように冬物が始まる8月〜10月を決算にすると1年で一番在庫の多い時期と重なり、棚卸しを行うにしても他の月の倍以上の労力を必要とするというケースなどもあります。

また、繁忙期の売上が思った以上に上がり、節税対策なども出来ずに、多額の税金の負担が発生してしまったというケースもあります。

そのため、繁忙期と決算期はずらすことが出来るのであれば、ずらしておいた方が無難です。繁忙期の時期が決まっている業種であれば、その繁忙期の前か後にずらすことをお勧めします。

 

ポイント③税理士の繁忙期を考えて決算月を決める

決算は、会社にいくら利益が出て、資産の状況がどうなっているのかを計算することを言いますが、この決算の数字がまとまると、法人税の申告書や消費税の申告書などを作成して、税務署に申告することになります。

この申告書は税理士が作成することになりますが、この申告書は、決算から2ヶ月以内に税務署に申告する必要があります。例えば、3月決算の会社であれば、5月末が申告の期限です。

日本では3月決算の会社が多いため、5月は決算チェックや法人税等の申告のピークの時期になるため、税理士の繁忙期ということになります。

自社の繁忙期の考え方と同じように、税理士側が忙しいという状況の中で、決算チェックや法人税等の申告を依頼すると、限られた時間の中でこなさなければならないため、十分に対応してもらえない可能性があります。

実際に、この時期の税理士法人や税理士事務所の社内はピリピリとした雰囲気になっているところが多いのが実情です。

また、税理士は、確定申告の時期である2月から3月にかけても繁忙期になるため、3月決算の時期と同じような状況になります。

このようなことから、どうしてもという特別な理由がないのであれば、3月や12月、1月を決算期にするのは避けたほうが無難です。

 

ポイント④資金繰りを考えて決算月を決める

法人税や消費税の申告書の提出期限は、決算から2ヶ月以内ですが、法人税や消費税を納める期限も申告書の提出期限と同じ決算から2ヶ月以内となっています。

そのため、この税金を納める時期と、会社として多く資金が必要になる月、例えば賞与の支給時期であったり、仕入の支払いが多い月である場合には、「ただでさえ、資金繰りが苦しい時に、税金の支払いなんて出来ない!」と言った状況になるケースも多いです。

税金を払うのが遅れると延滞税が発生しますし、銀行の融資にも影響してきます。

会社設立した後でないと、この資金繰りの大変さは実感しづらいと思いますが、資金繰りを考えて決算月を決めるというのもポイントが高いです。

決算期については、会社設立した後でも決算期を変更することが出来ます。もし決算期を変更したいという場合は、担当税理士に相談してみてください。

まとめ:会社設立時に決めなければいけないこと

会社設立にあたって決めなければいけないことはたくさんありますが、将来の会社経営に影響する部分でもあります。

会社設立後に変更できる内容のものもありますが、余計なトラブルを避けるためにも、会社設立のスケジュールを考えながら、時間を掛けてしっかりと検討していくことをおすすめします。

会社設立のスケジュールや手続きの流れについては、「恵比寿で会社設立|失敗しないための手続きの流れを徹底解説!」の記事で確認してください。