今まで会社員だった人は、社会保険や税金については、全て会社が手続きしてくれていました。
しかし、起業して会社を設立すると、社会保険や税金関係の手続きはすべて自分で行わなければいけません。会社員時代には社会保険のことなんて、今まであまり意識したことが無かったという人も多いと思います。
すべての会社は、社会保険への加入が義務付けられています。
経営者としては、会計や税金のことと同様に社会保険についても最低限の知識は必要ですので、
ここでは雇用保険や労災保険など社会保険の全般について、加入の要件や手続きについて、解説していきます。
会社と社会保険の関係
すべての会社は、社会保険への加入が法律で義務付けられています。法人であれば強制的に社会保険の適用事業者という扱いになるので、会社設立と同時に社会保険には加入する必要があります。
会社を設立しても社員を雇っていなければ、社会保険は加入しなくてもよいと考えている人もいるかもしれませんが、取締役が一人の会社、すなわち代表者しかいない会社でも社会保険に加入する義務はあります。
ちなみに、個人事業の場合は、社員を5人以上雇っている場合には、社会保険に加入する義務がありますが、4人以下であれば、加入する必要はありません。
社会保険とは?
社会保険とは、健康保険、厚生年金保険、労災保険、雇用保険のことの総称です。社会保険という総称を一般的には使っていますが、健康保険と厚生年金保険を合わせて社会保険、労災保険と雇用保険をあわせて労働保険という言い方を抑えておきましょう。
また、これらの社会保険については法律も管轄も加入手続きも違いますので、このことを理解した上で、加入方法について確認していきましょう。
健康保険と厚生年金保険の加入手続き
健康保険と厚生年金については、本店所在地の最寄りの年金事務所でまとめて手続きをすることになります。
年金事務所ごとの管轄は、全国の相談・手続き窓口のサイトでご確認ください。
1.健康保険・厚生年金保険新規適用届を年金事務所に提出する
会社設立をしたら、まず「健康保険・厚生年金保険新規適用届」を管轄の年金事務所に郵送等で届け出ることになります。この届出用紙は、日本年金機構のホームページでダウンロードできるので、ダウンロードしてエクセル入力すると効率的です。
事業所を設立し、健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき
また、この健康保険・厚生年金保険新規適用届を提出する際には、下記の書類を添付する必要がありますので、同時に準備が必要です。
・法人の登記事項証明書(3ヶ月以内に発行されたもの)
・法人番号指定通知書のコピー
※「国税庁法人番号公表サイト」に掲載されている法人情報の画面を印刷したものでも問題ありません。
2.健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届を年金事務所に提出する
会社設立後に役員報酬の金額が決まったら「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を同様に所轄の年金事務所に届け出ます。従業員を使用した時も同様で、原則5日以内に提出することになっています。家族を社会保険の扶養にするときは、「健康保険被扶養者(異動)届」も一緒に提出する必要があります。
・家族を被扶養者にするとき、被扶養者となっている家族に異動があったとき、被扶養者の届出事項に変更があったとき
労働保険の加入手続き
労災保険と雇用保険のことをあわせて労働保険と呼びますが、労働保険は労働者のための保険であるため、従業員がいない場合は、加入する必要はありません。代表者は経営者であり、労働ではなく経営なので、加入できないということになります。アルバイトを雇用した場合でも労働をしてもらうことになるため、労働保険には加入しなければいけません。
労働保険の適用事業となったときは、まず労働保険の保険関係成立届を所轄の労働基準監督署又は公共職業安定所に提出します。
そして、雇用保険の適用事業となった場合は、このほかに、雇用保険適用事業所設置届及び雇用保険被保険者資格取得届を所轄のハローワーク(公共職業安定所)に提出しなければなりません。
1.保険関係成立届を労働基準監督署に提出する
労働保険の適用事業は、労働保険の保険関係成立届を労働基準監督署に提出する必要があります。この届出の提出期限は、保険関係が成立した日の翌日から10日以内となっています。
2.労働保険概算保険料申告書を労働基準監督署に提出する
保険関係成立届を提出したら、今度は労働保険料の支払いを行う必要があります。労働保険料の支払うためには、労働保険概算保険料申告書に、その提出年度分の労働保険料を概算計算して申告して納めることになります。提出先は保険関係成立届と同じで労働基準監督署に、保険関係が成立した日の翌日から50日以内に提出することになります。
3.雇用保険適用事務所設置届をハローワークに提出する
会社設立をして従業員を雇うと雇用保険への加入が必要になります。アルバイトやパートの人でも1週間の労働時間が20時間以上で、1ヶ月以上働く見込みがある場合の人を一人でも雇用すると雇用保険の適用事業者という扱いになります。雇用保険適用事務所設置届とは、この雇用保険の適用を受けるための届出になります。
この雇用保険適用事業所設置届の提出期限は、従業員を採用した日の翌日から10日以内で、ハローワーク(公共職業安定所)に提出しなければなりません。この届出の提出の際には、①労働保険の「保険関係成立届」の事業主控え(労働基準監督署の受理済みのもの)②法人の登記事項証明書 を添付する必要があります。
4.雇用保険被保険者資格取得届もハローワークに提出する
雇用保険の手続きでは、雇用保険被保険者資格取得届の提出も必要になります。こちらの届出の提出期限は採用した日の翌月の10日までとなっていますが、提出先はハローワークになるので、雇用保険適用事業所設置届とあわせて提出すると効率的です。また、雇用保険被保険者資格取得届を提出する際には、労働者名簿や雇用契約書などの労働者を雇用している事実が確認できる書類を求められます。
労災保険とは?
労災保険とは、労働者が通勤中や業務中に業務上ケガをしたり、病気になった理、死亡した場合に、その従業員や残された家族のために必要な保険を支払ってくれるというものです。事故や過労死をした人に「労災が出た」というニュースを聞いたことがある人もいると思いますが、この「労災」は労災保険のことになります。
雇用保険とは?
雇用保険とは、労働者が失業した場合に、労働者の生活や雇用の安定、就職の促進のため再就職までの期間に失業給付を支給するというものです。失業の予防や雇用機会の増大、労働者の能力の向上を図るための事業も行っています。
会社設立後に社会保険に加入しなかった場合はどうなるの?
会社設立すると、すべての法人は社会保険の加入が法律で義務付けられているため必ず加入する必要があると考えて良いでしょう。
法律で義務付けられているので、未加入の会社には加入するように年金事務所から連絡が入ります。年金事務所などでは、国税庁のマイナンバーなどの情報から給与支給の実態などの加入状況を調べることができるため、社会保険の未加入の会社へ加入要請の連絡がいくようになっています。
この加入要請に応じない場合には、さらに警告文などが届き、年金事務所からの訪問などがあり指導され加入が求められるようになります。それでも加入をしない会社に対しては、最終的には年金事務所の職員による立ち入り検査が行われて、強制的に社会保険に加入させられることになります。
この場合の社会保険料については過去にさかのぼって支払うこといなりますが、最大で2年間さかのぼって支払うことになってしまいますので、このことを知っておかないと後から大変な負担を強いられることになります。
経営者としては、このような事態を避けるためにも、年金事務所から加入要請があった時点で速やかに加入手続きをすべきでしょう。
また、従業員を雇用していると雇用関係の助成金なども多くありますが、この助成金を受けるためには雇用保険に加入していることが前提となっています。雇用調整助成金や産業雇用安定助成金などが有名ですが、経営環境の変化の中でこれらの助成金が役立つ場面はたくさんありますので、社会保険に加入しないことによるデメリットを考えると、社会保険に加入しないという選択は自ずと無くなってきます。
まとめ
会社設立をして会社を経営していく以上、社会保険の加入は避けて通れません。
以前は、社会保険料の会社の負担が大きいからという理由で、社会保険の未加入の会社が多くありましたが、年金事務所からの加入要請や立ち入り検査などが増えて社会保険の未加入事業者への指導が強化された結果、いまでは未加入の会社の話しをあまり聞かなくなってきました。
創業時はなるべくコストを抑えたいと考えるのは当然ですが、後から多額の社会保険料の支払いを請求されると、会社経営に大きな影響を及ぼすことになってしまいます。
社会保険への加入は法律で義務化されている以上、社会保険に加入することを前提に会社設立をするべきです。
会社設立したら社会保険には必ず加入の手続きを行ないましょう。
これから会社設立をお考えの方は、会社設立の手続きについて「恵比寿で会社設立|失敗しないための手続きの流れを徹底解説」の記事で紹介していますので参考にしてください。