会社設立した後に資本金を増やすことを検討する人も多く、実際に増資をする会社もたくさんあります。
資本金は大きければ大きいほどビジネスでは有利という話しを聞きます。ビジネス上、増資が有利になるのであれば、ぜひ増資を検討したいところです。
ここでは、これから増資を検討される方のために、増資のメリットやデメリットについて解説していきます。
資本金の増資とは?
増資とは、資本金を増やすことをいいます。増資を行うためには、法務局への手続きが必要になります。
新しく出資をしてもらい株式を発行することになりますが、既存の株主が出資してもよいですし、全くの第三者でも問題ありません。
また、現金などの金銭での増資と金銭以外での増資の手続きもありますので、自社にあった方法を検討してみてください。
資本金の増資にはどんなメリットがあるのか?
増資の一番のメリットは、新しく現金等で出資をしてもらうことにより、資金を調達できることにあります。
融資と違い、基本的には返済する必要のない資金になるため、その資金で新規事業や設備投資などの資金に充てることができます。
もちろん、運転資金に使っても問題ありませんので、資金が必要な時は、融資の他に増資という選択肢があると考えてよいでしょう。
もう一つのメリットは、増資をして資本金を増やすことによって信用度が増すということが挙げられます。ある会社をホームページで調べる時には、ほとんどの人がその会社の資本金の額を確認すると思います。そして資本金の額によって、無意識のうちにその会社の規模や信用度を図っているはずです。
資金金が大きなければ大きいほど、対外的な印象は良い方へ変わっていきますので、取引先や金融機関はもちろんですが、人を採用する際にも資本金の額がもたらす影響はとても大きいです。
会社設立時の資本金が少ない会社などは会社を発展されるためにも増資を検討することをお勧めします。
資本金の増資にはどんなデメリットがあるのか?
増資のデメリットは、コストがかかることです。
増資の手続きを行うためには、法務局へ資本金を変更する手続きが必要になります。この手続きを行うためには、登録免許税という税金を支払う必要がありますが、この登録免許税は、増資する資本金×7/1000と3万円のいずれか高いほうとされているため、たとえば、増資で300万円を増やす場合には、300万円×7/1000=21,000と3万円のいずれか高いほうなので3万円、500万円を増やす場合には、500万円×7/1000=35,000円と3万円のいずれか高いほうなので、35,000円となります。
この増資の手続きを司法書士に依頼する場合には、別途司法書士への報酬が発生します。増資の額や増資の方法などによって司法書士の報酬は変わりますが、数万円から10万円以内くらいを考えておく必要があります。
また、税金も資本金の額によって負担は変わりますので、増資の額によっては税金の負担額が変わるということを知っておく必要があります。
一番大きな影響を受ける資本金の額は1億円超の場合です。資本金が一億円を超えると法律上は中小企業とみなされなくなってしますため、中小企業に優遇されている様々な特例が受けられなくなってしまいます。法人税の軽減税率や交際費の損金算入の特例、少額減価償却資産の特例などがこれにあたります。
さらに、法人事業税には、資本金が1億円を超えると外形標準課税という税金が別途かかってくるため、税金面だけ考えるとかなり負担が増えることになります。
また、法人の住民税にあたる均等割という税金は、資本金が1,000万円以下であれば、7万円ですが、資本金が1,000万円を超えると18万円になりますので、資本金が1,000万円超えると税金の負担が増えるということも知っておくとよいでしょう。
増資を検討する場合は、この税負担の影響も考慮しながら増資額を検討する必要があります。
資本金については、資本金の大きさで税金が変わるという記事を「会社設立時の資本金はいくらにすべき?決め方や平均」でもご紹介していますので、参考にしてください。
資本金の増資する場合の手続きの方法
次に、増資をする場合の具体的な手続きの方法をみていきます。
増資には、公募増資、株主割当増資、第三者割当増資の3つの方法があります。
また、増資は金銭以外にも、現物出資や無償増資という手続きの方法もありますので、参考にしてください。
①公募増資とは?
公募増資とは、既存の株主や特定の第三者に対してではなく、広く一般の投資家を対象にして、新たに株式を発行して資金を調達する方法です。この公募増資は、上場会社のみが行える手続きであるため、ほとんどの会社は選択できませんので、詳細は割愛させていただきます。
②株主割当増資とは?
株主割当増資とは、既存の株主を対象に新たに株式を発行して資金を調達する方法です。既存の株主の持株数に応じて平等に新株式が割り当てられるため、株主の構成や持株比率を変えずに増資ができるというメリットがあります。
新しく株主として出資してもらいたい場合や現在の一部の株主が出資をする場合は、第三者割当増資という方法になるため注意が必要です。
また、株主割当増資を行う場合には、原則として持株割合に変動がないため、増資の払い込み金額が実際の株価と比べて高い場合や低い場合であっても税金の問題はありません。
③第三者割当増資とは?
第三者割当増資とは、特定の第三者を対象に新たに株式を発行して資金を調達する方法です。既存の株主の一部の人に対して行う場合も第三者割当増資になります。この第三者割当増資は、1株あたりの株価も出資者との話し合いで自由に設定できるため、資金調達や取引先との関係性を強化する目的などで利用されることが多いのが特徴です。
第三者割当増資は、既存の株主の持株割合に変動が生じることになり、既存の株主に不利益が生じたり、税務上の問題が発生する可能性があるため注意が必要です。
現状の株価よりも低い価格で増資が行われたような場合には、その差額は既存の株主から新しい株主への贈与があったことになるため贈与税課税の問題が生じます。払い込み額や株主が個人か法人かによって課税関係や税金の種類が変わりますので、第三者割当増資を行う場合には、必ず税理士などの専門家に相談してください。
現物出資による増資の手続き
金銭以外の財産を出資して増資を行うことを現物出資といい、有価証券などの株式や債権、不動産などの固定資産などを出資の対象とすることができます。現金などを用意できない場合は、この現物出資というやり方を検討してもよいでしょう。
ただし、現物出資の場合は、出資する財産の評価が難しく、財産の評価が過大であった場合などは、他の株主の不利益になる可能性もあります。そのため、財産の評価には弁護士、公認会計士、税理士などの証明を受けるか、裁判所に検査役の選任をしてもらい財産の価額の調査を受ける必要があり、通常の金銭の出資の場合に比べると手続きが煩雑になります。
無償増資による増資の手続き
金銭や金銭以外の財産を出資する以外の方法として、無償増資という手続きの方法もあります。
剰余金を資本金に組み入れて増資を行います。貸借対照表の純資産の部のなかで振替えを行うことによって資本金を増加させることができるため、出資も必要なく比較的簡単に手続きできます。
資金調達が必要なく、剰余金が潤沢な会社におすすめなやり方です。
会計処理は、「繰越利益剰余金 ×××/資本金 ×××」という仕訳になり、税務処理上も資本金等や利益積立金額についても変動は生じないため、結果的に税務上は何もなかったものと取り扱われるため、税金の問題も発生しません。
【参考】
<会計上の仕訳> 「繰越利益剰余金 1000/資本金 1000」
<税務上の仕訳> 「仕訳なし」
<別表五(一)利益積立金額および資本金等の額の計算に関する明細書の記載例>
まとめ
一般的には、資本金の額を会社の信用度の基準にするケースが多いのは間違いありません。
会社設立時に少ない資本金でスタートした場合などは、ビジネス面でも様々なメリットが考えられますので、増資を検討してもよいと思います。
しかし、増資を行うと税金の負担が増えたり、知らないところで課税のリスクが増えてしまうケースもありますので、
増資のデメリットもよく理解したうえで、自社に適した増資方法と増資額を、ぜひ検討してみてください。