ソフトウェアの製作費は、多額になることが多く製作費の会計処理について判断に悩む場面は多いのではないでしょうか?
ここでは、一般的なソフトウェアの耐用年数と会計処理について解説していきます。
ソフトウェアとは?
ソフトウェアとは、コンピュータに何らかの仕事を行わせるためのプログラムのことを言います。
コンピューターは、ハードウェアとソフトウェアで成り立っており、パソコン本体やスマートフォンなどのコンピュータを物理的に構成している装置などのことをハードウェア(hardware)と呼び、そのハードウェア上で働くプログラムをソフトウェア(software)と呼びます。
ソフトウェアの種類は、オペレーションシステム(OS)とアプリケーションソフトの大きく2つに分けられますが、オペレーションシステムは、WindowsやMacOSなどの基本的なハードウェアの操作を行うためのソフトウェアで、アプリケーションソフトは、表計算ソフトやスマートフォン用のアプリなどの様々な種類があります。
ソフトウェアの会計処理と勘定科目
ソフトウェアは、無形固定資産に該当するため、「ソフトウェア」勘定で計上し、減価償却をしていく資産となります。
ソフトウェアは取得方法によって取得価額の計算方法が変わりますので、ここでは基本的な取得価額の計算方法を確認していきます。
1.ソフトウェアを外部から購入した場合の取得価額
購入の代価+購入に要した費用の額+事業の用に供するために直接要した費用の額
*そのソフトウェアの導入に当たって必要とされる設定作業および自社の仕様に合わせるために行う付随的な修正作業等の費用の額は、取得価額に算入します。
2.ソフトウェアを自社で製作した場合の取得価額
製作に要した原材料費、労務費および経費の額+事業の用に供するために直接要した費用の額
*既に所有しているソフトウェアまたは購入したパッケージソフトウエア等の仕様を大幅に変更して、新たなソフトウェアを製作するための費用の額は、その新たなソフトウェアの取得価額になりますが、その場合(新たなソフトウェアを製作することに伴い、その製作後既存ソフトウェア等を利用することが見込まれない場合に限ります。)におけるその既存ソフトウェア等の残存簿価は、その新たなソフトウェアの製作のために要した原材料費となります。
*市場販売目的のソフトウェアにつき、完成品となるまでの間に製品マスターに要した改良または強化に係る費用の額は、そのソフトウェアの取得価額に算入します。
3.ソフトウェアの取得価額に算入しないことができる費用
ソフトウェアの取得価額に入れないで、支出の都度費用計上することができるものがあります。
次のような費用は、取得価額に入れないことができるため、できる限り経費の金額を多くしたいときは内容をよく確認して費用計上すると節税につながります。
- 自己の製作に係るソフトウェアの製作計画の変更等により、いわゆる仕損じがあったため不要となったことが明らかなものに係る費用の額
- 研究開発費の額(自社利用のソフトウェアに係る研究開発費の額については、その自社利用ソフトウェアの利用により将来の収益獲得または費用削減にならないことが明らかな場合におけるその研究開発費の額に限ります。)
- 製作等のために要した間接費、付随費用等で、その合計額が少額(その製作原価のおおむね3パーセント以内の金額)であるもの
国税庁HP:ソフトウェアの取得価額と耐用年数
ソフトウェアの耐用年数
ソフトウェアの耐用年数は、利用目的や開発方法などによって異なりますが、
税制上のソフトウェアの耐用年数については、「複写して販売するためのもの」や「研究開発用のもの」であれば、耐用年数は3年と決まっており、会計処理上は、3年間で均等に減価償却を行うことになります。
「自社で利用するためのもの」であれば、耐用年数は5年となり、会計処理上は5年間で均等(定額法)に減価償却を行うことになります。
国税庁HP:ソフトウェアの取得価額と耐用年数
また、ソフトウェアについては、下記のように利用目的別に様々なプログラムがあり、プログラムの利用年数は個別の影響を受けて様々な要素によって左右されますが、これらのソフトウェアについても、大きくは「販売するためのもの」か「自社で利用するための」かで、会計処理上の耐用年数は、3年もしくは5年に分かれます。
エンターテイメントソフトウェア(ゲーム、映画、音楽プレーヤーなど)の耐用年数
エンターテイメントソフトウェアは、テクノロジーの進歩や市場の需要の変化により、比較的短い耐用年数を持つことが一般的です。新しいソフトウェアや技術の登場によって、古いソフトウェアは陳腐化し、需要が低下することがありますが、一般的には、数年から数十年程度の間で利用されることが多いです。
ビジネスソフトウェア(会計ソフト、CRMシステム、プロジェクト管理ツールなど)の耐用年数
ビジネスソフトウェアは、特定の業務プロセスを支援するために利用されます。耐用年数は、業界のニーズや技術の進歩によって異なりますが、一般的には数年から数十年の範囲で利用されることが多いです。重要な要素は、ソフトウェアのサポートと保守が継続されるかどうかです。
インフラストラクチャソフトウェア(オペレーティングシステム、データベース、ネットワーク管理ツールなど)の耐用年数
インフラストラクチャソフトウェアは、システムやネットワークの基盤として使用されます。これらのソフトウェアは、セキュリティパッチや新しい機能の提供など、継続的なアップデートとサポートが必要です。一般的に、数年から数十年以上にわたって使用されることがあります。
オープンソースソフトウェアの耐用年数
オープンソースソフトウェアの耐用年数は、開発者コミュニティによってサポートされるため、ソフトウェアの品質や機能改善の速度に依存します。一部のプロジェクトは非常に長い期間にわたってサポされることもありますが、一般的には数年から数十年の間で利用されることが多いです。オープンソースソフトウェアは、利用者自身が必要に応じて修正やカスタマイズを行うこともできるため、長期的な利用が可能です。
ソフトウェアのバージョンアップ費用の税務上の取り扱い
すでに所有しているソフトウェアに修正やバージョンアップを行った場合の取り扱いについては、その修正等の内容によって、修繕費に計上するものと、ソフトウェア(資本的支出)に計上するものに分かれます。
1.修繕費として計上するもの
すでに所有しているソフトウェアのプログラムを修正等した場合、その修正等がプログラムの機能上の障害の除去や現状の効用の維持のために行うものであれば、修繕費として経費計上することになります。
2.資本的支出としてソフトウェアに計上するもの
すでに所有しているソフトウェアのプログラムを修正等した場合、その修正等が新たな機能の追加や機能の向上等のためにかかっ費用であるときは、税務上は資本支出という扱いになり、ソフトウェアに計上して、耐用年数に応じて減価償却をすることになります。
また、この支出が、20万円未満の少額である場合には、修正等の内容が資本的支出に該当する場合であっても、重要性が低いため修繕費として計上することができます。
*資本的支出とは、「建物や備品などの資産の修理を行う際に、改良を加えてその価値や機能を向上させたときにかかった費用」のことを指します。
国税庁HP:法人税法基本通達7-8-6(ソフトウエアに係る資本的支出と修繕費)
まとめ
ソフトウェアは、無形固定資産として「ソフトウェア」勘定で減価償却をしていくことになります。そして、ソフトウェアは「販売するためのソフトウェア」、「自社で利用するためのソフトウェア」の違いで会計処理上の耐用年数は、3年もしくは5年に分かれ、それぞれの耐用年数に応じて減価償却を行なっていきます。
最近では、ホームページを制作する場合にも高度なシステムが組まれていることも多くあり、一般的には広告宣伝費等で経費計上が可能なホームページの制作費用ですが、高度なシステムが組まれている場合には、このシステム部分については、ソフトウェアに計上して減価償却を行なっていく必要があります。
ホームページの制作費が高額な場合は、税務調査でも見積書や仕様書を見られますので、ホームページの制作費は内容をよく確認して会計処理を行なっていきましょう。