日本政策金融公庫の審査に落ちた理由は?対処方法は?

会社設立後の創業時や事業を拡大していく過程で必要なのが資金調達のノウハウです。

その中でも日本政策金融公庫の融資は、個人事業主や創業間もない中小企業でも利用できるため、「初めて借りた銀行融資は日本政策金融公庫の融資でした」、という人は多いです。

しかし、融資の審査を通過するためには、しっかりと準備する必要がありますが、この準備を怠ったため審査で落とされてしまう人も多いのが現実です。

そこで、ここでは日本政策金融公庫の融資を検討している方に審査に落とされる原因と、万が一審査に落ちてしまった場合にどんな対処方法があるかなどを解説していきます。
この記事の執筆者:宇坪隆夫

日本政策金融公庫をはじめて利用する人へ

日本政策金融公庫は、株式会社ではありますが、政府からの出資で運営されている金融機関です。

民間の金融機関が行なっている金融を補完することを目的として運営されており、創業期の個人事業主や中小企業などにも積極的に融資を行うことで、日本経済を支える役割を担っています。

また、セーフティネットの機能も持っているため、自然災害や感染症の流行(新型コロナウィルスなど)、経済環境の変化にも、いち早く機動的に対処してくれる政策金融機関という位置付けになります。

 

【セーフティネット(safety net)】

あらかじめ予想される危険や損害の発生に備えて、被害の回避や最小限化をはかる目的で準備される制度や仕組みのこと。

 

はじめて日本政策金融公庫を利用するという方は、「会社設立したら創業融資で資金調達する方法を徹底解説」で創業融資について詳しくご紹介していますので、こちらの記事を参考にしてください。

日本政策金融公庫はどんな基準で審査しているの?

日本政策金融公庫の融資の際の審査に関しては、融資を受けられる要件を満たしていれば、銀行や信用金庫などの民間の金融機関よりも融資審査には通りやすいと言われています。

審査では特に自己資金や事業計画などが重視されますが、融資を受けるためのこれらの条件を備えることができれば、融資の審査に通る確率は格段に上がります。

融資の審査に通るためには、審査に落ちてしまう理由を知っておくことが重要になるため、日本政策金融公庫の審査に落ちてしまう理由を見ていきましょう。

日本政策金融公庫の審査に落ちてしまう理由とは?

1.申し込みをする人の信用情報に問題があるから

日本政策金融公庫では、融資の審査の際には、個人の信用情報は必ず調べられます。

「貸したお金をちゃんと返してもらえるかどうか」を判断するために、過去の債務の履歴などを信用情報機関で照会しますので、例えば、消費者金融などの借入があるとか、過去に債務整理をしたことがあるかどうかなどは、担当者との面談などで聞かれなくても、全て調べられていると考えてよいでしょう。

信用情報に問題がある場合には、最初の時点で審査に落ちてしまいます。過去に債務整理や自己破産をしたことがある場合や長期間の滞納がある場合などは、審査を通過するのは難しいでしょう。

消費者金融やカードローンなどのキャッシングの債務が残っている場合も審査ではかなり不利になってしまうため、債務が残っている場合は残高を一括返済するなどしてから申し込みをするべきです。

また、住宅ローンも債務ですので、心配になる方もいると思いますが、住宅ローンの残高があっても通常の住宅ローンの範囲内であれば、審査で不利になることはあまりありません。過去に1度や2度の返済遅れがある程度であれば問題ないでしょう。

 

ちなみに、下記の会社などで個人の信用情報を開示請求することができますので、心当たりがある人は確認してみてください。

株式会社シー・アイ・シー →クレジットカード会社等の契約内容や支払い状況などが確認できる

全国銀行個人信用情報センター →銀行等の借入内容や支払い状況などが確認できる

株式会社日本信用情報機構 →消費者金融等の契約内容や支払い状況などが確認できる

 

2.電気、ガス、水道料金などの公共料金や税金の支払いが遅れているから

意外だと思うかもしれませんが、公共料金などの支払い状況も確認されます。

公共料金は毎月支払い期日が決まっているため、公共料金の支払いが遅れるような人は、「融資の返済も遅れるだろう」と判断され、公共料金の支払いが遅れていることが融資の審査に落とされた理由の一つになっていることがよくあります。

電気代、ガス代、水道料金などの公共料金のほか、携帯電話代なども含まれますので、金額が少ないからと言って支払いが遅れないように日頃から期日を守るように心がけましょう。

また、税金の未納や滞納がある場合も公共料金と同じように審査に影響します。

3.自己資金がないから

日本政策金融公庫で融資を申し込むためには、自己資金を用意することは必須です。例えば、創業融資などは、融資希望額の10分の1の自己資金がないと申し込みができません。また、実際の融資は、自己資金の倍くらいまでの金額しか借りられないケースが多いため、融資希望額の半分くらいは自己資金で用意することが理想的です。

自己資金が用意できないからといって、友人などからお金を借りても自己資金としては認められません。他人からお金を借りたり、出どころが説明できない資金だったため、自己資金として認められず審査に通らなかったというケースは多いです。

自己資金として認められるためには、毎月の給料からコツコツと貯めた貯金であることが理想ですが、配偶者名義の貯金や親から贈与されたお金、積立型の生命保険なども自己資金として認められますので、自分で貯めた資金が少ない人は、自分の貯金以外でどれくらい用意できそうか確認しておくべきでしょう。

4.事業計画に信憑性がないから

事業計画書や創業計画書を作成して提出しますが、この計画書の数字に根拠がない場合や計画性がなく数字に矛盾が生じている場合には、審査に通りません。利益率や人件費率も意識して計画を立てる必要もありますし、借りたお金を具体的に何にいくら使うかなども明確にしておく必要があります。数字に関する根拠になり得る見積書や発注書、契約書などはできる限り用意しておくべきでしょう。

ご自身のキャリアや自己資金額も踏まえた現実的な数値になっているかを再度確認してみましょう。

5.担当者との面談での対応が悪いから

融資の申し込み後に担当者との面談があります。

この面談では、どんな事業内容などか資金の使途や希望額など創業計画書や企業概況書に記入した内容から質問されることになります。特に数字面では売上の根拠など根拠資料などを用意し数字をわかりやすく説明する必要があります。

そのほかにも、信用できる人物か事業の経験やノウハウを持っているかなどがみられます。

この面談時に、計画書に書いている内容をしっかりと説明できなかったり、担当者からの質問に答えられなかったりすると審査に悪い影響を及ぼします。

担当者に信用されないと融資には通りません。

少なくとも計画書に記入した内容については、しっかりと受け答えができるように準備をしましょう。

日本政策金融公庫の審査に落ちてしまったら再申込みはできないか?

日本政策金融公庫の融資に申し込みし最終的に審査に落ちてしまった場合は、もう2度と融資を受けることはできないのでしょうか?

審査に落ちてしまった原因にもよりますが、審査に落ちた原因を改善することができれば、期間を半年程度あければ、再度融資の申し込みを行うことは可能です。

それでは審査に落ちてしまった時の対処の方法を見てみましょう。

1.なぜ審査に落ちてしまったのかを把握して改善する

融資の審査に落ちてしまった時は、まずなぜ審査にしまったのかを把握する必要があります。しかし、日本政策金融公庫の担当者に理由を聞いても教えてくれません。

審査に落ちる理由は、

1.申し込みをする人の信用情報に問題があるから

2.電気、ガス、水道料金などの公共料金や税金の支払いが遅れているから

3.自己資金がないから

4.事業計画に信憑性がないから

5.担当者との面談での対応が悪いから

のいくつかの項目に当てはまるはずですので、心当たりのある項目を把握して、改善して行くようにしていきましょう。

また、一度審査に落ちてしまうと、再度申し込みができるのは半年後からです。それまでに事業としての実績も上げられていれば、審査の上でも評価されるので、より多くの実績を積み上げていってください。

2.自己資金を増やして再申込みをする

自己資金が少ない場合には、まずは資金または資金に変わるものを増やしておく必要があります。

一番分かりやすいものは、親などの親族から資金の贈与などを受けることになりますが、そのほかに、個人で所有している設備や車などを会社のものとして資産化することができれば、会社の財務内容を良くすることができるので検討してみてください。この処理は特殊なやり方になるため、専門家に相談することをおすすめします。

3.制度融資や信用保証会付きの民間金融機関の融資に申し込む

創業期に融資を受けることができる金融機関は、日本政策金融公庫だけではありません。日本政策金融公庫の融資を受けられなかった場合でも、銀行や信用金庫などの民間の金融機関で融資を受けられる場合も多くあります。

創業したばかりの人や中小企業を応援するための制度に、制度融資というものがあります。東京都などの地方自治体が独自に行なっている融資で、金利や保証料の負担をしてくれたりと直接金融機関から融資を受けるより、負担はかなり軽減され、借りやすい融資ですので、ぜひ検討してみてください。

この融資制度の唯一のデメリットは、融資の申し込みから実行までに2ヶ月から3ヶ月ほどかかってしまう点です。

 

制度融資については「会社設立後に成長を加速させる制度融資とは?」で詳しく解説していますので、参考にしてください。

まとめ

日本政策金融公庫の融資は、金利も低く、無担保無保証で借りることができるので、創業期や中小企業にとっては、とても力強い存在ですし、「融資の審査に落ちてしまう理由」を理解しながら、しっかりと準備すれば、融資を受けられる可能性は格段に上がります。

また、準備不足で審査にしまった場合にも、原因を把握して改善できれば、再申し込みは可能ですので、諦めずに出来ることに取り組んでいきましょう。